歌うリスト リストの合唱曲/祝典カンタータ【スタッフが語る】
楽譜スタッフ キタム
草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE
今回紹介するのは、リストの合唱曲です。リストと言えば膨大な数のピアノ曲、そして交響詩というオーケストラのジャンルを生み出したことで有名で、それ以外のジャンル、特に声楽曲は「愛の夢」の原曲が知られるくらいで、あまり演奏されません(日本では…)。
この曲の正式なタイトルは少し長くて「ボンにおけるベートーヴェン記念像除幕式のための祝典カンタータ」というもので、リストが尊敬していたベートーヴェンに関係する式典のために作曲されたものです。30分程の長さの曲ですが、その後は演奏される機会がほとんどなく、2000年のミレニアムイヤーにやっとドイツで再演されましたが、合唱曲のレパートリーとして定着はしていないようです。
この曲の最大の特徴は曲の後半にベートーヴェンの(声楽曲ではない)作品をほぼそのまま使用している点です。その曲はピアノ三重奏曲第7番「大公」、通称「大公トリオ」の第3楽章です。数あるベートーヴェンの曲の中でも極上の癒しの音楽であるこの変奏曲のテーマ(主題)、第1変奏、そして第4変奏をオーケストレーションして、メロディに歌詩をつけて合唱曲にしているのです。
実は私がこの曲を知ったきっかけは、この合唱曲ではなく、リスト自身がピアノ連弾用に編曲した演奏のレコードを持っているからです。コンティグリア兄弟という双子のピアノデュオがリスト編曲のベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」の2台ピアノ版を録音していて、そのカップリングにこの曲が収録されていたのです。その後、“第九”だけは一度CD化されたのですが、この祝典カンタータはCD化されないままです。
合唱版は再演された際のライヴ音源がCD化(BVCD-31005,ヴァイル(指)WDRカペラ・コロニエンシス)されましたが、現在は生産中止となっています。
今回も音源の入手が難しい曲を取上げましたが、一聴の価値がある作品です。
草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE TOPページ