モーツァルト フラグメント集
スタッフTKのオススメクラシック 2018.6.5(県祭りの日) Vol.6
草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE
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今回紹介する「フラグメント」とは曲名ではありません。この言葉は“断片”や“未完の”という意味で、モーツァルトは数多くの作品を(完成させて)後世に残した一方、何らかの理由で作曲を中断あるいは放置されたものが少なからず存在します。その中でも有名なのが映画『アマデウス』で取り上げられたレクイエムですが、これはモーツァルトの死によって未完に終わったので、今回紹介するフラグメント作品とは少し意味合いが違います。
また手塚治虫の絶筆となった漫画「ルートヴィヒB」にも、放置された作品について触れられています。
例えば1789年の春、モーツァルトはある人物から作品の依頼を受けます。その内容は『私の娘のためにやさしく弾けるピアノソナタを6曲作ってほしい』というものでした。もしかしたらこの依頼人は前の年にモーツァルトが作曲した、ソナチネアルバムにも載っている ハ長調K.545のソナタを知っていて依頼したのかも知れません。そしてモーツァルトはこの依頼に応えようと作曲したのか、数小節で中断しているものが、幾つか残っています。それらはどれも初見で弾ける程簡単なものばかりですが、結局モーツァルトは(やさしい)ソナタを1曲も完成させることは出来ませんでした。しかしその後モーツァルトは、自身最後となるピアノソナタを1曲書き上げています。それがニ長調 K.576のソナタです。この曲は依頼のやさしい曲への反動なのか、モーツァルトのピアノ作品の中でも演奏技術がもっとも難しい曲となっています。
他にもピアノソナタ第6番 ニ長調 K.284の第1楽章は現行のものが完成する前に、展開部の途中、あと少しで再現部に入れる所まで書かれ、中断されたものが存在しています(楽譜にはモーツァルト自身によるものかは不明ですが、大きく×印がつけられています)。それは冒頭の1小節目と第2主題はほぼ同じなのですが、第1主題の大半と結尾部、展開部がまったくの別物で、提示部の最後 現行版がフォルテで終わっているのに対し、中断されたものはピアノでやさしい感じで終わっています。展開部も16分音符の音形が中心なのは似ているのですが、両手が交差する現行版ほど込み入っていません。
CDも楽譜も今まで紹介した中で一番入手が難しいかも知れません。CDはデュオ・クロムランクが演奏したフラグメント集というタイトルのCD が以前出ていました。
2018.6.5(県祭りの日) Vol.6
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