ポール・デュカス(デュカ)/ピアノソナタ 変ホ短調
スタッフTKのオススメクラシック 2018.6.12 Vol.7
草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE
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デュカス(1865-1935)はパリに生まれたフランスの作曲家。一番有名でよく知られている曲は『魔法使いの弟子』というオーケストラ曲で、ディズニーの音楽映画「ファンタジア」の中で、見習い魔法使いのミッキーマウスがひどい目に合う…といえば、曲名や作曲者を知らなくてもピンとくる方がおられると思います。
今回紹介するのはピアノソナタです。フランスの作曲家でピアノソナタ? 思い浮かぶ人物が他にいるでしょうか? しかし、このデュカスのソナタはフランス風と感じる所はあまりありません。実はデュカスはフランスの楽譜出版社からベートーヴェンのピアノソナタ全集の校訂を行っていたため、この曲はベートーヴェンの、しかも後期のピアノソナタを思わせる、重厚で長大な(全4楽章、演奏時間50分弱‼)作品なのです。
あまり速くないテンポで憂鬱な雰囲気の第1楽章、静かで瞑想的な第2楽章、力強く急速なテンポのトッカータ風な第3楽章、この楽章の中間部はフーガが使われています。
そして終楽章、ベートーヴェンのピアノソナタのいくつかが終楽章に重心を置いているのと同じように、この楽章は長い序奏から始まり(この部分は展開部後半で再び現れます)、だんだんテンポが速くなって、シンコペーションのリズムが特徴の第1主題、長調に転調し、広大な大海原を思わせる第2主題(再現部の第2主題が聞きどころの1つです)、そして第3主題(ソナタ形式の分析では一般的ではありませんし、この曲についての解説がほとんどないため、私独自の解釈ですが、こうするときれいに説明できます)、とても力強い推進力のある主題、そしてオクターブの跳躍がカッコいい結尾部を経て展開部に入ります。展開部でもシンコペーションのリズムが執拗に使われ、若干テンポが速くなって冒頭の序奏部分が推進力をもって再び現れます。そして再現部、第1主題と第3主題は提示部とほぼ同じなのですが、第2主題が音源を聴いただけではどうやって弾いているのかわからない、すごい仕掛けがあります。そしてコーダは第2主題のメロディやシンコペーションを中心としながらも次々と新しいモチーフが現れ、ひたすら盛り上がって終わる直前の突然の中断(ここもグッとくるポイント!)。最後は変ホ長調の輝かしい響きの中堂々と曲が終わります。
CDも楽譜も輸入物になりますが、入手は難しくないので是非一度聴いて下さい。
2018.6.12 Vol.7
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