私の好きな吹奏楽コンクール課題曲 その2
スタッフTKのオススメクラシック 2018.7.13 (2019.5.4修正)Vol.10
草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE
前回に続きオススメ吹奏楽コンクール課題曲の紹介、行進曲以外編です。
・高度な技術への指標(河辺公一、1974年度 課A)
・シンフォニック・ポップスへの指標(河辺浩市、1975年度 課Ⅾ)
・ポップス描写曲「メインストリートで」(岩井直溥、1976年度 課D)
・ディスコ・キッド(東海林修、1977年度 課C)
その1で(1980、90年代を中心に)と言っていましたが、それ以前のこの4曲は外せないでしょう。もう40年以上前の作品ですが、今もコンサートなどでよく取り上げられる名曲です。「高度な技術への指標」はバラエティ番組のBGMにもよく使われています。
・Overture FIVE RINGS(三枝成彰、1985年度 課A)
2020年現在唯一のテレビ番組の音楽(NHK時代劇『宮本武蔵』)をもとにした課題曲。前半のうねるようなクラリネット、そして後半休みなしでひたすら叩き続けるティンパニが凄まじい作品です。
・吹奏楽のための交響詩「波の見える風景」(真島俊夫、1985年度 課B)
・風紋(保科 洋、1987年度 課A)
・渚スコープ(吉田峰明、1987年度 課B)
好きな吹奏楽作品のアンケートなどで常に上位にくる「波の見える風景」と「風紋」は、今もよく演奏されるので、ここでは紹介だけにして、この時期の私の推しは「渚スコープ」と次の「ムービング・オン」の2曲です。「渚スコープ」は穏やかな波、きらめく波、力強い波など海の色々な様子を短い中にうまく盛り込んだ作品です。音質のいい新しい録音でまた聴きたいです。
・ムービング・オン(川上哲夫、1987年度 課D)
ビッグバンド・ジャズのスタイルで書かれた課題曲。テンポの表記もSlowlyやMediumなどと記されています。参考音源と淀工以外の演奏、聴いたことないなぁ…
・吹奏楽のための「深層の祭」(三善 晃、1988年度 課A)
単に吹奏楽コンクール用の課題曲としてではなく、日本の吹奏楽オリジナル作品としてとても重要な曲。緻密なアンサンブルが要求され、作曲者本人が詳細な説明をしていますが、それでも理解するのが難しい曲です。
・交響的舞曲(小林 徹、1988年度 課B)
どことなくロシア音楽の雰囲気が漂う曲。後半、違うリズムの2つのメロディーが同時進行して、ラストも味わいのある終わり方をします。
・吹奏楽のための「斜影の遺跡」(河出智希、1991年度 課A)
栄えある朝日作曲賞の第1回受賞作。朝日作曲賞とは、新しい吹奏楽作品を発掘すべく設けられたもので、受賞作は翌年の課題曲に採用されます。この曲は冒頭の不気味なパーカッションからラストのトランペットソロまで緊張感溢れる内容です。
実はこの作曲者は吹奏楽作品はほとんどなく、その後BOUNCEBACKのメンバーとしてJ-POPのアーチスト(AKB48、EXILE、島谷ひとみ、AAA、浜崎あゆみ 他)に楽曲を提供しています。中でも有名なのが、AKB48のメジャーデビューシングル「会いたかった」です。
・コーラル・ブルー(真島俊夫、1991年度 課B)
副題に“沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象”とあり、コンクール課題曲には何作か、沖縄(琉球)の音階を使った作品が登場し、そのどれもが明るく楽しい曲調となっています。当時の課題曲としては打楽器が多く使われており(ティンパニを含めて14種類)、スコアの表紙に効率的な楽器配置を記したイラストがありました。
・饗応夫人(太宰治作「饗応夫人」のための音楽)(田村文生、1994年度 課Ⅲ)
・交響的譚詩~吹奏楽のための~(露木正登、1996年度 課Ⅴ)
吹奏楽コンクール課題曲での難易度論争を起こした激ムズ課題曲2曲。どちらも冒頭の数小節を聴いただけで、そのイカレっぷりがわかると思います(私はどちらも好きですが…)。饗応夫人の中間部では4分の3拍子(16分音符12個分)と16分の11(!!)拍子が交互に出てくるというトンデモぶりです。
・雲のコラージュ(櫛田てつ之扶、1994年度 課Ⅳ)
一聴しただけで雅な世界が堪能できる課題曲。実は各団体に送られたスコアには、通常の吹奏楽編成の3分の2程のパートしか音が書かれておらず(しかも手書き)、各団体の人数や特色に合わせて音色の組み合わせを作り出し演奏するという、別の意味での課題が与えられた曲でした。何やら難しそうですが是非聴いてほしい、全コンクール課題曲中でもっとも感動できる作品です。ハープも加わった奈良県天理高校の演奏がオススメです。
・クロマティック・プリズム(松尾善雄、1996年度 課Ⅲ)
行進曲で何度か課題曲に選ばれている作者の初めてのマーチ以外の課題曲。タイトルの「クロマティック(半音階)」のとおり、ほぼ全ての楽器(パート)が、(メロディだけでなく内声部やベースラインまで)半音階進行をしている摩訶不思議な作品。でもとってもおもしろい曲です。テューバやティンパニにも半音階進行のソロがあります。
・道祖神の詩(福島弘和、2000年度 課Ⅰ)
この曲も沖縄(琉球)地方の音階を使ったとっても楽しい曲です。今や吹奏楽界でひっぱりだこの作者による2作目の課題曲で、2019年度の全日本吹奏楽コンクール課題曲への委嘱が決まっています(課題曲Ⅲ 行進曲「春」)。
吹奏楽コンクールの音源はよほど昔のものでないかぎり、入手が難しいものはないので、ぜひいろいろな曲を聴いてみて下さい。
2018.7.13 (2019.5.4修正)Vol.10
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