イベール/喜遊曲(ディヴェルティスマン)
スタッフTKのオススメクラシック 2018.10.16 Vol.15
草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE
ジャック・イベール(1890‐1962)はフランスの作曲家。代表作は「寄港地」というオーケストラ曲で、作品の数は多くないですが、どれもがオシャレで親しみやすいものばかりです。この喜遊曲は室内オーケストラ用の作品で、
Ⅰ.序曲、 Ⅱ.行列、 Ⅲ.夜想曲、
Ⅳ.ワルツ、 Ⅴ.パレード、Ⅵ.終曲 の全6曲からなり、全曲を通して演奏しても、15~16分ほどのコンパクトな曲集です。
室内オーケストラ用ということで演奏する人数は最少で16人。木管がフルート、クラリネット、ファゴットそれぞれ1人づつ、金管がホルン、トランペット、トロンボーンそれぞれ1人づつ、弦楽器が合わせて8人(弦は実際は倍以上で演奏されています)、それにピアノ(チェレスタ)1人、打楽器奏者が1人という編成です(ピアノは第3、6曲にソロのカデンツがありますが、メロディーを奏でる所はほとんどありません。また、打楽器はティンパニを含めて10種類使われますが、1人で演奏できるように書かれています(終曲がちょっと大変です…))。
それぞれの曲はまず、変拍子が気にならないくらい快活であっという間に終わる「序曲」、6曲の中では一番規模が大きく(それでも5分ほど)、中間部で突然メンデルスゾーンの結婚行進曲が流れ、その後の金管のミュートが笑いを誘う「行列」、「夜想曲」はたった26小節しかなく、神秘的で闇夜の静けさを思わせます。終盤にピアノのカデンツ、クラリネットのソロ、そして最後はタンバリンで曲を閉めます。タンバリンがこんなに妖しく聴こえる曲は他にはないでしょう。
後半の3曲はどれも楽しい曲です。まず第4曲の「ワルツ」ですが曲の出だしとコーダはワルツのリズムではありません。目まぐるしい動きの低音弦と符点のリズムによる前奏に導かれ、まずフルートとクラリネットの二重奏で、かわいらしいけどちょっとせわしいワルツが始まります。その後いろいろなワルツが展開していき、最初のワルツが優雅に再現されます(この部分でのトロンボーンのオブリガードが聴きどころです)。コーダはテンポが速くなり鋭いリズムでカッコよく終わります。
第5曲「パレード」は、どこからか聴こえてくるファンファーレと足音、それがだんだん近づいて、目の前を通り過ぎ、どこかへと去っていく、という描写をものの見事に表現しています。目の前で繰り広げられるパレードは楽しさ、賑やかさの中に、ちょっぴり寂しさも含まれます(このコラムを書くために聴き直した際、好きになった曲です)。
そして終曲(フィナーレ)はピアノソロによるクラスター的なカデンツ、ホルンとトロンボーンによる不協和音、そして徐々にテンポが速くなって、その前奏部を吹き飛ばすような熱狂的でノリノリな音楽が展開していきます。
CDは「フランス音楽名曲集」や「フランス管弦楽作品集」といったタイトルのものにいくつか収録されています(「ディヴェルティメント」という曲名のものもあります)。
・デュトワ/モントリオール交響楽団(フレンチ・コンサート)
・マルティノン/パリ音楽院管弦楽団(フランス音楽コンサート)
・佐渡裕/ラムルー管弦楽団(イベール:管弦楽曲集、佐渡裕さんのデビューCDです)
などがありますが私のオススメは、
・ザ・ラスト・ナイト・オブ・ザ・プロムス(ロッホラン/BBC交響楽団)です。
プロムスというイギリスの音楽祭でのライブ録音で、観客の興奮が歓声だけでなく、鳴り物や笑い声も含めて聴こえてくる凄いものですが、残念ながら現在廃盤です。
2018.10.16 Vol.15
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