ベートーヴェンとティンパニ
スタッフTKのオススメクラシック 2018.11.13 Vol.17
草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE
私は最近はあまり演奏会などに行っていないのですが、クラシックのコンサートやTV中継では、オーケストラのある楽器を特に注意して視ることがあります。それはティンパニです。オーケストラの一番後ろで一人立っての演奏(この記事を書くため色々な演奏を見ましたが、座ってる方が多かったです…)、そして動きと音が一致するかなめの楽器です。ベートーヴェンは古典派からロマン派へ繋がる中で、管弦楽器の新たな可能性を見い出し、それは打楽器のティンパニに対しても同じことが言えます。今回はそのベートーヴェンの作品からティンパニの ここを聴いて!!という部分をいくつか紹介します。
・交響曲第3番 変ホ長調「英雄」第1楽章 520小節目
いきなりピンポイントです。第1楽章の後半、提示部(前半)にはなかった16分音符による連打があります。私はここを派手に叩いてくれる演奏が好きです。また第1楽章の終わり近くでトランペットと一緒に3連符でリズムを刻むところも好きです。
・交響曲第4番 変ロ長調 第2楽章
ラスト直前(102小節目)、この楽章の特徴的な符点リズムをティンパニだけで(オーケストラの他の楽器はすべて休み)、刻む部分があります(耳を澄ませて聴いて下さい)。
・交響曲第5番 ハ短調「運命」第3楽章の終わりから第4楽章にかけて
C音で(注:主音です。コントラバスなどの低音弦はA♭→G(属音)と動いています)拍を刻み、クレッシェンドして第4楽章を迎える部分。ちなみに第1楽章冒頭あの有名な「♪ジャジャジャジャ―ン」は、オーケストラの全ての楽器は演奏していません。ティンパニも叩いていません。
・交響曲第6番 ヘ長調「田園」
実はこの曲、ティンパニの出番は第4楽章「雷雨、嵐」の部分だけです。全曲約35分のうち、たった3分半ほどしか演奏していません。
・交響曲第8番 ヘ長調 第4楽章
“第九”第2楽章よりも10年以上前、この楽章でオクターブの調律による特殊な効果を、試みています。
・交響曲第9番 ニ短調「合唱付き」第1、2楽章
年末の風物詩“第九”まず第1楽章は、再現部301小節から338小節までトレモロでフォルテッシモで、ひたすら叩き続けています。途中さらにクレッシェンドしたり、アクセントをつけたりと凄まじい箇所です。そして第2楽章「オーケストラの主役は俺だ‼」と言わんばかりの、見せ場タップリの楽章です。
・ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 第1楽章
ピアノのカデンツァが終わった直後、第1主題にある特徴的なリズムで、オーケストラと独奏ピアノを先導していく部分。
・ピアノ協奏曲第5番「皇帝」第3楽章
終盤、静かになっていくところで、ティンパニのリズムに乗せてピアノとの演奏をしていく部分があります。そして、
・ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 第1楽章
この曲は冒頭、ティンパニのソロから曲が始まります。この曲についてはそこだけなのですが、実はベートーヴェン自身がこの曲をピアノ協奏曲用に編曲していて、原曲のヴァイオリン協奏曲の方ではベートーヴェンはカデンツァは残していなかったのですが、このピアノ協奏曲 ニ長調では、しっかりとしたカデンツァを作曲しています。それには途中からなんとティンパニが加わり、ピアノとティンパニの二重奏という、ある種、異様な音楽が展開していくのです。(最近では「逆輸入」という形でヴァイオリン協奏曲でもティンパニ入りのカデンツァを採用する演奏も増えています)この部分だけでも是非とも聴いてほしいです。
2018.11.13 Vol.17
草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE TOPページ