私の嫌いな曲・・・
スタッフTKのオススメクラシック 2018.11.24 Vol.20
草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE
今まで私の好きなオススメしたい知られざる曲などを、いろいろ紹介してきましたが、実は1曲どうしても 我慢できない部分がある超有名曲があります。それはシューマン作曲の謝肉祭 Op.9のラストです。この「謝肉祭」は20曲からなる様々な雰囲気の曲が集まった作品で、終曲の「フィリシテ人と闘うダヴィッド同盟の行進」は3拍子なのに行進曲としか聞こえない、この曲でしか味わえないものがあります。が、そのラスト ほどんどの楽譜で最後の1ページ分にあたるPiú strettoの直前からが、どの演奏も楽譜通りに弾いていない、というより楽譜が出版社によってまちまちなのです。
私が大学時代、楽曲分析の一環でこの曲のエディション研究を行ったのですが、当時(今から30年程前)国内外の10数種の楽譜を集めたところ、このラスト1ページ 同じものは一つとしてなかったのです。
Piú strettoは225小節から始まっているのですが、その直前、楽譜にはリタルダンドなどは、どこにも書かれていないのに、多くのピアニストはテンポを落としています。
そして出版社によって解釈が違うのが231小節目と239小節目で、ここだけ3拍子のところに4分音符4つ入れている部分を、4連符として扱っているか、そうでないか、あるいはここだけ4分の4拍子にしているかと、いくつかのパターンがあります。
そして268小節目から最後まで、主和音(A♭‐C‐E♭)だけを両手で左右に移動させて弾くのですが、なぜどのピアニストも異常なほど速く弾くのでしょうか?「速度を速めて」という意味のstringendoの指示は、そこから24小節前の244小節目にありますが、244小節から速度を速めている演奏はあまり聴いたことがありません(ルービンシュタインとキーシンくらい?)。
ちなみにラヴェルがこの謝肉祭の中から数曲をオーケストラ用に編曲していて、少ないながらも録音されています。このシューマン/謝肉祭の編曲版ですが、ムソルグスキー/展覧会の絵をオーケストラ用に編曲して、原曲(ピアノ曲)以上の人気作にした人物とは思えないほど、普通の編曲物となっています。そして最後、stringendoの指示がないのか、インテンポのままで、とても悲惨な終わり方をしています。興味のある方は一度聴いてみて下さい。
今回少し文句の多い内容となってしまいましたが、曲自体は好きなので、CDや楽譜をお持ちの方は当該箇所を是非聴き比べ、読み比べしてみて下さい。
2018.11.24 Vol.20
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