リスト/祝典カンタータ(ベートーヴェンの楽曲を使った作品 その1)
スタッフTKのおすすめクラシック 2018.4.3 Vol.4 (2020 1.2改)
草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE
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今年2020年はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)生誕250年のメモリアルイヤー! そこで今回はベートーヴェンのある作品が使われた、フランツ・リストの合唱曲を紹介します。
リストと言えば膨大な数のピアノ作品、そして交響詩というオーケストラのジャンルを生み出したことで有名で、それ以外のジャンル、特に声楽曲は多くの曲を作曲していますが、日本では「愛の夢」の原曲が知られるくらいで、あまり演奏されるジャンルではありません。
この曲の正式なタイトルは少し長く『ボンにおけるベートーヴェン記念像除幕式のための祝典カンタータ』というもので、リストが尊敬していたベートーヴェンに関係する式典のため1845年に作曲されたものです。全体で30分程の長さの曲ですが、その後は演奏される機会がほとんどなく、2000年のミレニアムイヤーにやっとドイツで再演されたくらいで、合唱曲のレパートリーとしては残念ながら定着はしてないようです。
この合唱曲の最大の特徴は曲の後半にベートーヴェンの(声楽曲ではない)作品を使用している点です。その曲はピアノ三重奏曲第7番「大公」、通称「大公トリオ」の第3楽章です。数あるベートーヴェンの曲の中でも極上の癒しの音楽であるこの変奏曲のテーマ(主題)、第1変奏、そして第4変奏をオーケストレーションして、メロディに歌詞をつけて合唱曲にしているのです。ラストの盛り上がりで、ベートーヴェンからリストのオリジナルに移り変わる部分は大変感動的です。
実は私がこの曲を知ったきっかけは、この合唱曲ではなく、リスト自身がピアノ連弾用に編曲した演奏のレコードを持っているからです。コンティグリア兄弟という双子のピアノデュオが、リスト編曲のベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」の2台ピアノ版を録音していて、そのカップリングにこの曲が収録されていたのです。その後、“第九”だけは一度CD化されたのですが、この祝典カンタータはCD化されないままです。
合唱版は再演された際のライブ音源がCD化(BVCD-31005、ヴァイル(指)WDRカペラ・コロニエンシス)されましたが、現在は生産中止となっています。
今回も音源の入手が難しい曲を取り上げましたが、一聴の価値がある作品です。
2018.4.3 Vol.4 (2020 1.2改)
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