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追悼 小澤征爾

スタッフTKのおすすめクラシック 2024.3.10 Vol.54

草津A・SQUARE店/ミュージックサロンA・SQUARE

 「世界のオザワ」と呼ばれた指揮者の小澤征爾さんが先日(2月6日)88歳で亡くなられました。
 私は以前、自伝的エッセイ『ボクの音楽武者修行』のドキュメンタリードラマ「‘82指揮者・小澤征爾の世界」を見た記憶があるのですが(主演は野村義男、金八先生第1シリーズの3年後の単独主演作です)、今回調べてみると再放送はされてなく、ソフト化(ビデオ、DVDともに)もされてませんでした。
 ここで取り上げられているのが1959年のブザンソン国際指揮者コンクールでの優勝です(この時まだ24歳)。そしてカラヤン、ミュンシュ、バーンスタインらに師事して、1964年からRCAレーベルにレコーディングを始めます。
 初期録音の中で代表的な作品が、1967年録音のメシアン/トゥーランガリラ交響曲です。当時32歳、しかも作曲者立ち合いの中でのレコーディングでした。
 実はこの5年前、同曲をNHK交響楽団と日本初演して大成功を収めるのですが、初演の5ヶ月後、オーケストラ団員が演奏会をボイコットするというN響事件が起こり、小澤は活動の場を海外に移してしまいます。
 さてこのトゥーランガリラ交響曲、今でこそ20世紀現代音楽のオーケストラ作品の最高峰という位置づけですが、全10楽章、演奏時間が70分を超えるこの大作は初演から18年後、小澤がレコーディングするまでは、音源は2種類しかなく、この録音が現在までベストな演奏の一つに挙げられています。
 このCD(当時はもちろんLP)のオリジナルジャケットは、この作品のテーマである「愛」(LOVE)のアルファベット4文字をデザインしたもので、曲を聴いたことがない人でも、ジャケットデザインは目にしたことがあるかも知れません(EIGHT-JAM(関ジャム)のセットに置かれています)。が、どんな曲か気になって試聴サイトやYouTubeなどで第1楽章を聴かれる方は要注意です。冒頭の粗雑で過激な音楽に「……どこがLOVEやねん! それにこの『ヒュワ~』って音なに?」とツッコミを入れるかも。第4楽章のラストなどはLOVEな雰囲気ですけどね。
 この曲のオススメは第5楽章「星たちの血の歓喜」です。かなりテンポの速い曲ですが、他の楽章と比べて調性感もあり、メロディーも解りやすく、終盤の凄まじいピアノソロ(出鱈目のようですが、楽譜の通りに弾いています)とラストの響きに圧倒されます。
 そしてこの時期のもう一つの重要な録音が、武満徹作曲のノヴェンバー・ステップスです。ニューヨーク・フィルの依嘱作品として作曲され、1967年初演の指揮はもちろん小澤、そして同じ年にトロント交響楽団で初演のソリスト2人を迎えて初録音。そしてこの作品は23年後の1990年にサイトウ・キネン・オーケストラと再録音しています。
 このように20年もの年月が過ぎて再録音された作品として、
・オルフ/カルミナ・ブラーナ
RCA盤 ボストン交響楽団 1969年録音(34歳)
PHILIPS盤 ベルリン・フィル 晋友会合唱団 1988年録音(53歳)
・ブリテン/青少年のための管弦楽入門(パーセルの主題による変奏曲とフーガ)
RCA盤 シカゴ交響楽団 1967年録音(31歳)
ファンハウス盤 ボストン交響楽団 1992年録音(57歳)
などがあります。
 カルミナ・ブラーナの再録音(現在はユニバーサルミュージックから発売)は日本の合唱団を連れて、海外公演中にベルリンで収録された演奏です。
 ブリテンの再録音(現在はソニーミュージックから発売)はカップリングが、プロコフィエフ/ピーターと狼、サン=サーンス/動物の謝肉祭という子供たちのためのオーケストラ作品3曲を集めたもので、通常ナレーションのない動物の謝肉祭にも台本を作り(演出は実相寺昭雄、台本は実弟の小澤幹雄、ファンハウス盤の初回仕様はナレーション台本と絵本が付いていました)、小澤征爾本人によるナレーションを収録した、子供たちにクラシック音楽に親しんでほしいという気持ちが強く出た1枚でした。
 そして1998年長野冬季オリンピック開会式でのベートーヴェン/第九、2002年ニューイヤーコンサート(CDの売上はクラシックでは異例の100万枚以上!)の指揮などで名実ともに『世界のオザワ』と呼ばれる指揮者になりました。
 2002ニューイヤーではヘルメスベルガーⅡ世/悪魔の踊りの演奏が衝撃的でした。以前にもこの作曲家の作品は演奏されてましたが、2002年以降断然演奏回数が増えていき、またこの年の全日本吹奏楽コンクールで「悪魔の踊り」が取り上げられた時は“さすが阪急百貨店(当時)だな”と思いました。
 今回のニュースやワイドショーで映像が流れた長野オリンピックでの指揮ですが、日本テレビ系列で放送されていた『The 突破ファイル』のブルーインパルス隊の回は永久保存版です(クリア困難なミッションを突破するカギは「世界のオザワ」だった!?)。
 そして最後に今年2024年は桐朋学園時代の恩師、斎藤秀雄の没後50年にあたります。没後10年の1984年に開催したメモリアルコンサートで集まった門下生らが母体となったオーケストラが「サイトウ・キネン・オーケストラ」です。小澤征爾指揮のもとでこのオーケストラは数々の名演を残してきました。海外の名だたるオーケストラやソリストとの名演奏とともに、今後も「世界のオザワ」の音楽は多くの人々に聴き続けられるでしょう。