デュカス(1865-1935)はパリに生まれたフランスの作曲家、一番有名でよく知られている曲は「魔法使いの弟子」というオーケストラ曲で、ディズニーの音楽映画「ファンタジア」の中で、見習いの魔法使いのミッキー・マウスがひどい目に遭う…といえば、曲名や作曲者を知らなくてもピンとくる方がおられると思います。
今回紹介するのはピアノソナタです。フランスの作曲家でピアノソナタ?思い浮かぶ人物が他にいるでしょうか?しかし、このデュカスのソナタはフランス風と感じるところはあまりまりません。実はデュカスはフランスの出版社からベートーヴェンのピアノソナタ全集の校訂を行っていたため、この曲はベートーヴェンの、しかも後期のピアノソナタを思わせる、重厚で長大な作品(全4楽章、演奏時間50分弱!!)なのです。
あまり速くないテンポで憂鬱な雰囲気の第1楽章、静かで瞑想的な第2楽章。力強く急速なテンポのトッカータ風な第3楽章、この楽章の中間部はフーガが使われています。
そして終楽章。ベートーヴェンのピアノソナタのいくつかが、終楽章に重心を置いているのと同じように、この楽章はまず長い序奏から始まり(この部分は展開部の後半で再び現れます)、だんだんテンポが速くなってシンコペーションのリズムが特徴の第1主題、長調に転調し、広大な大海原を思わせる第2主題(再現部の第2主題がこの曲で一番グッとくる所です)。そして第3主題(ソナタ形式の分析では一般的ではありませんし、この曲の解説がほとんどないため、私独自の解釈ですが、こうするときれいに説明できます)とても力強い推進力のある主題、そしてオクターブの跳躍がカッコいい結尾部を経て展開部に入ります。展開部でもシンコペーションのリズムが執拗に使われ、若干テンポが速くなって第4楽章冒頭序奏の部分が再びあらわれます。そして再現部、第1主題と第3主題は提示部とほぼ同じなのですが、第2主題、音源を聴いただけでは、どうやって弾いているのかわからない、すごい仕掛けがあります。そしてコーダは第2主題のメロディやシンコペーションを中心としながらも次々と新しいモチーフがあらわれ、ひたすらに盛り上がって終わる直前の突然の中断(ここもグッとくるポイントです)。最後は変ホ長調の輝かしい響きの中、堂々と曲は終わります。
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